医療現場では各科目の知識をつなげて対応することが必要で、近年の薬剤師国家試験(国試)では、チーム医療で薬剤師が職能を発揮できるかを問う実践的な問題が多く出題されています。
国試の実践問題では基本的に、共通リード文(多くは症例や処方などがベース)に対して、各科目の問題、実務の問題の2連問が出題されます。近年は理論問題でも科目の壁を越えて考える連問が出題されます。例えば107回国試の理論問題では、「化学」「法規・制度・倫理」「衛生」の3連問(133~135)、「薬理」「病態生理・薬物治療」の2連問は3題(156~157、159~160、165~166)出題されています。薬ゼミの科目責任者が、107回国試を引用して、他科目につなげる学修方法のアプローチを紹介します。
薬理出題例 問263
<問263> 解答 5
乳がんを症例とする実践問題の出題頻度は高く、101回では乳がんの発症に関与する遺伝子の問題(衛生)、102回では副作用から乳がんの治療薬を選ばせる問題(薬理)、104回では症例からHER2陰性と読み取り、適切な治療薬を選択する問題(薬理)が出題されています。103、106、107回でも乳がんに関する実践問題は複数問出題されています。
本問も乳がんを背景とする問題ですが、リード文の「月経あり」という記載から「閉経前乳がん」と読み取ることができれば正解に近づけます。
既出問題から乳がんに関する科目横断的な知識を習得する必要があり、特に薬理の実践問題では、閉経前と閉経後での治療薬の選択をできることが重要です。前提として閉経前後の内分泌環境を理解する必要があり、生物の学修も必要となります。まず生物で内分泌について学修し、閉経前後の違いを確認できたら、そこに薬物を関連させて知識をつなげると良いでしょう。
個別医療という視点では、例えば既出問題で「HER2陰性」の症例に対する適切な治療薬の選択について問う出題があった場合に陽性時の解答を考えたり、「閉経前乳がん」の既出問題が「閉経後」だった場合に選択肢の中に解答があるかを考えたりするなど、一つの既出問題で多くのパターンに対応できるようにすると良いでしょう。
病態・薬物治療出題例 問286~287
<問286> 解答 5 <問287> 解答 1
本問はパーキンソン病患者の治療中に該当患者に何が生じているのかを推測し、その対応法を考える問題です。症例および服用薬よりwearing-off現象を疑い、経時的な患者の動向を鑑みた上で、どのような治療薬が適切か否か(個別医療)を考える必要があります。
近年の国試では、服用薬、検査値、症候などから副作用を推測し、対策を提案する問題が増加しています。各疾患に特徴的な検査所見や症状を理解しておくことはとても重要です。臨床現場で遭遇する可能性が高い副作用に関しては、特徴的な所見やその対策を理解しておきましょう。
薬剤師には、合併症や併用薬など患者背景を読み取った上で、個別医療に対応するために最適の治療薬や副作用対策を提案する力が求められています。
実務や問題演習などで副作用に触れた際に、その副作用の病態を思い出し、その対応に用いられる薬剤の薬理作用を勉強するなど、科目をまたいだ学修を進めましょう。
法規・制度・倫理出題例 問316~317
<問316> 解答 4、5 <問317> 解答 5
麻薬や向精神薬(管理薬)に関する問は毎年出題されています。管理薬の範囲では、特に法規と実務の壁は薄くなっており、「法規の知識で解く実務」や「実務の知識で解く法規」の出題が多くあります。今後はさらにこの壁がなくなると予想されますので、勉強する際に法規と実務でリンクすることが重要です。例えば、107回では問317で廃棄に関する内容が出題されていますが、106回では廃棄に関する問は実務で出題(333)されています。
法規と実務の壁はあってないようなものです。今回紹介した設問以外にも例えば、コミュニケーション技法(服薬指導、座り位置)、倫理的規範(〇〇宣言など)、麻薬や向精神薬などの管理薬の取り扱い(保管、事故、廃棄など)等が法規・制度・倫理または実務の双方で、同様の内容が出題されています。法規を学べば実務領域の内容も修得でき、実務を学べば法規領域の内容も修得できるので、相乗効果があることを念頭に学修を進めてください。
双方の学修を進める際には、「法規とは最低限守るべきもの」として線引きをし、「実務は現場・患者の目線にたって運用されるもの」と考えると、「法規では〇〇だが、実務的には□□」という内容も納得できることが増えると思います。
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<使い方>
薬ゼミLINEで「107-263」「107 316」のように記入して、送信してください。
薬ゼミLINEURL
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