わたしの「1日」~業界の先輩に聞く~ セイワファーマシー竹の塚在宅センター 阿部吏沙子さん

2025年1月20日 (月)

薬学生新聞

在宅訪問にやりがい

阿部吏沙子さん

 阿部吏沙子さんは在宅医療に特化した薬局であるセイワファーマシー竹の塚在宅センター(東京都足立区)で働く薬剤師だ。2020年3月に神戸薬科大学を卒業後、病院薬剤師を経験し、同社に転職した。在宅訪問薬剤師として医師の指示に基づき高齢者施設を訪問し、必要な薬を届けたり、薬に関する相談に対応したりしている。

 昨年12月のある日。午前9時に朝礼を行い、医師の訪問診療に同行する診療同行薬剤師と、薬局内で薬の鑑査と調剤を行う調剤担当薬剤師がその日の薬の配送や訪問診療予定などを共有する。阿部さんは9時15分に薬局から高齢者施設に出発した。

 9時45分に到着後、まず施設看護師や事務スタッフと今後の入居・退居や残薬状況などの情報を収集し、今日どんな薬が必要になるのかなどを打ち合わせする。10時過ぎに医師が施設に到着し、施設内での訪問診療がスタート。医師とクリニックの看護師、高齢者施設の看護師、阿部さんの4人が一人ひとりの患者に対応する。

 この日に対応する患者は約80人。同センターに勤務して2年。一人ひとりの顔と名前を覚えた。患者の部屋ではなく談話室に集まった患者を一斉に診療することもあるため、患者の顔と名前を覚えておくのは施設の在宅医療に関わる薬剤師にとって鉄則だ。

 阿部さんは「いろいろな職種の人たちと臆することなく話ができるのが私の強み」と話す。訪問診療中は医師が患者にかけている言葉を聞き漏らさないよう意識を傾ける。一人ひとりの診察時間は短く、薬の変更を口頭で指示される場合もあるが、阿部さんは次の患者に移動するまでの間に医師に指示内容を確認し、施設看護師やクリニックの看護師に伝達する。

 ささいなコミュニケーションロスが医療過誤につながりかねない。「自分は分かっているつもりだけど先方には伝わっていないこともあります。“ここまで言わなくてもいいのでは”といった内容でも細かく確認し、きちんと文書化して意思疎通を取るように心がけています」と阿部さんは語る。

 正午くらいに訪問診療が終わり、阿部さんはその日の訪問診療で処方が変更された内容を確認した上で、高齢者施設には処方内容変更表を渡し、薬局にも変更された内容についてFAXを送り、施設を出た。

昼食にピザ

昼食にピザ

 薬局に戻ったのは午後2時。それから1時間の休憩に入り、昼食を取る。午後の仕事前のリラックスタイムだ。午後3時には翌日に配送する薬について調剤する調剤担当薬剤師と打ち合わせを行う。約80人が入居する高齢者施設において患者一人ひとりに対するサポートを行うには前日に入念な準備が必要で、とても大事な時間だ。

 阿部さんは「どんなに準備していても当日朝になって急なオーダが入ったりすることもある」と話すなど、臨機応変な対応も求められる。施設から薬局に送られた診療予定表には、処方して欲しい薬や患者の状態などが記されており、確認作業も怠らない。

 訪問診療中に急なオーダが発生するケースでも、予見性を持った準備や行動で薬を届ける。「患者さんの状態から急に必要になりそうな薬については予測を立てています。例えばヘルペスのような症状が出ている患者さんがいれば処方になくても薬剤を即、配薬できるように準備し、自分の予測が見事に当たった時はガッツポーズですね」

 その日は午後4時からは薬歴を書き、午後6時に退社した。

 鳥取県出身の阿部さんは大学卒業後、地元の大学病院に3年間勤めた。

 「上京して働いてみたい」との思いに駆られ、「これから広がっていくジャンル」と感じた在宅業界へのキャリアチェンジを決意。セイワファーマシーへの入社は「他の薬局にはあまりない在宅に特化した薬局。在宅に集中した業務を行える」ことが決め手になった。

 高齢者施設を担当するようになり、「患者さんの趣味なども垣間見ることができるのが楽しい」と声を弾ませる。「朝は起きずに昼から食事をする患者さんもいて、そういう患者さんには医師と相談して朝に服用する薬剤を昼に変更することも提案できる」と患者視点に立ったサポートを続けている。

 今後意識していきたい仕事について、ポリファーマシー(多剤服用)への対応を挙げる。入居時に持参薬が多い患者が一定数いる。アレルギー薬や痛み止めの薬などが処方されており、配薬をする施設看護師も「薬が多い」との認識があるが、どの薬を止めるのがいいか分からない状態にある。阿部さんは「患者さんの訴えがなければ薬を止める、季節性の薬剤も減らしてみる。入居時が薬を減らす一番のタイミングだと思う」と力を込める。

 これから就職先を探す薬学生には「わくわくする仕事を選んでほしい」とエールを送る。「就職活動する時に自分を語らないといけない。自分にどんな適性があるのかを考えた時に“わくわくする仕事”を見つけることが大事だと考えました。後悔のない就職活動をしてほしいですね」と語る。



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