多職種との連携推進に意欲
尾崎真彩さんは大学卒業後、ゆう薬局グループで働き始めて3年目になる薬剤師だ。京都府北部にある舞鶴市の三安ゆう薬局で日々、院外処方箋の調剤業務を担当しつつ、週1回在宅業務に出向く。地域住民を対象に毎月1回開く「ゆう薬局カフェ」の立ち上げや運営では中心メンバーの1人として活躍。今後、地域の多職種との連携を深めながら「患者さんを支える存在になりたい」と語る。
尾崎さんは神戸学院大学薬学部を卒業後、京都府内を中心に92薬局を展開するゆう薬局グループに就職。舞鶴医療センター前にある三安ゆう薬局に配属された後、他店舗でも経験を積み、今年度から再び三安ゆう薬局の常勤薬剤師として働いている。
11月のある日。尾崎さんは出勤すると、まず服薬指導業務を受け持った。三安ゆう薬局の処方箋応需枚数は1日60~70枚。薬剤師3人が1日のうち数時間ずつ▽服薬指導▽計数・計量調剤▽監査――の業務を交代で受け持つ仕組みだ。尾崎さんは午前中、約20人の患者に服薬指導を行った。
この日は、認知症や高血圧を患う80代女性が、自宅に残っていた薬を持って薬局を訪れた。以前、尾崎さんが服薬指導した時に薬の飲み忘れが多いことに気づき、持参するよう伝えていたものだ。持ってきた袋を開けてみると、想像通り残薬は多かった。早速、医師に連絡して相談。今回の処方箋で日数を調整するとともに、飲み忘れを防ぐため一包化で対応することを決めた。
午後は、計数・計量調剤や監査業務を受け持ちつつ、医薬品の在庫管理や発注を手がけたり、午前中の服薬指導の記録をつけたりした。午後4時には、近隣の患者宅へ訪問薬剤管理指導に出向いた。
この患者は、パーキンソン病や高血圧、頻尿、便秘などを患う80代の男性。複数の医療機関を受診し、それぞれの処方は一包化されていたが、飲み忘れが多かった。ヘルパーからの依頼を受けて半年前から出向くようになった尾崎さんは、1日4回あった服薬のタイミングを2回に整理。複数医療機関の処方を全てまとめて一包化するようにした。
この日は、一包化した薬を持って自宅を訪れ、服薬カレンダーにセット。便秘のコントロールがうまくいっていないと聞いたため、患者やヘルパーと服用量の調整を話し合った。
午後4時30分には薬局に戻り、訪問患者の報告書を作成し、医師とケアマネージャーに提出。その後、翌月に開く「ゆう薬局カフェ」の準備を行った。午後5時45分に業務を終え、退社した。
尾崎さんは、小学生の頃、近所のドラッグストアで見た白衣姿の薬剤師に憧れを抱き、薬学部に進学。地域の人たちや様々な職種と関わりを持てる薬局で働くことに魅力を感じ、その中でも在宅医療に力を入れているゆう薬局グループを就職先に選んだ。
働き始めて2年目の頃、ふとしたきっかけで関わることになったのが「ゆう薬局カフェ」だ。
住民の新たな交流拠点として、地域の店舗運営者らが日替わりで店長を務めるレンタルカフェスペースが2016年、舞鶴市内に設けられた。「ここでカフェをやってみないか」。ある時、上司からかかった声に、尾崎さんは「ぜひやりましょう」と目を輝かせて応じた。薬局にカフェを併設し地域で交流するのが、入社時から描いていた尾崎さんの夢。渡りに船の提案だったという。
17年5月以降、毎月第2土曜日にこのスペースで「ゆう薬局カフェ」を開き、管理栄養士監修のランチや、地元で焙煎したこだわりの豆でいれた珈琲などを提供。地域の医療、介護、福祉関係者によるミニ講座をカフェ内で開催するほか、薬剤師ら多職種が来店者の相談に応じる体制も構築している。
運営の中心メンバーは尾崎さんを含む5人だ。ランチメニューの考案やミニ講座の企画などを担当。カフェ当日も薬剤師2人はホール係、管理栄養士を含む3人の事務職員が調理係となって住民と交流する。
カフェは、地域の住民と多職種を結びつけ、住民の健康意識を高める場だ。自然に生まれる輪の中に、必要に応じて薬剤師が加わっていくことができればいいという。
カフェや在宅医療での関わりを通して「薬局の中だけで仕事をするのではなく、地域の様々な多職種と交わりながら仕事をするのが楽しい」と尾崎さん。「患者さんのことを一番に考え、患者さんがどうありたいかを汲み取って、多職種と一緒に考えながら支援できる薬剤師になりたい」と将来像を語る。