【スギHD/ココカラファイン】経営統合へ協議開始‐実現なら業界トップに
ドラッグストア業界の再編が加速している。ドラッグストア大手のスギホールディングスとココカラファインは、経営統合に向けた協議を開始すると発表した。両社の売上高を単純合算すると9000億円に迫る規模となり、統合が実現すれば業界トップに躍り出ることになりそうだ。ココカラファインは、マツモトキヨシホールディングスと資本業務提携を目指した協議も開始しており、3社を合わせて売上高約1兆5000億円のドラッグストア企業連合体が発足する可能性も出てきた。
スギHDとココカラファインの両社は、これまで非公式で業界再編に関する意見交換を行ってきたが、スギHDは4月にココカラファインに対して正式に経営統合を提案。同社が提案を受け入れ、6月1日付で両社で合意書を締結した。
スギHDは、調剤併設型ドラッグストア「スギ薬局」を中心に、関東、中部、関西エリアに1190店舗を展開。このうち833店舗で処方箋調剤を実施しており、年間応需枚数は860万枚を超える。
一方、ココカラファインは全国に1354店舗を出店し、そのうち処方箋調剤を292店舗で実施している。両社とも調剤売上高はドラッグストア業界内では上位に位置する。
今回、スギHDは、経営統合により市場拡大が続く調剤を核とした医療・介護事業領域を強化し、量的・質的にナンバーワン企業を目指すことが可能と判断。両社の既存店舗網が大きく競合せず、エリア補完性が高く相乗効果を得ることができるとしている。両社は今後、経営統合準備委員会を設置し、今月末をメドに経営統合に関する基本合意書の締結を目指す。
一方、ココカラファインは、スギHDとの経営統合について、マツモトキヨシHDとの資本業務提携に向けた協議と並行して進める方針。今後、ココカラファインは社内に特別委員会を設置し、2社との協議について客観的な立場から総合的に検討していく予定という。
ドラッグストア業界は、ここ数年、大手が地場のチェーンをM&Aなどで傘下に収めることで企業規模を拡大する動きが進んでいる。近年は同業他社や異業種による出店や価格競争に、インターネット販売の台頭など、生き残りをかけた競争が激化している。今回の大手企業同士の経営統合が実現すれば、ドラッグストア業界の再編にさらに拍車がかかる可能性も出てきた。
CAR-T療法を薬価収載‐患者1人当たり3349万円
再生医療等製品として承認されたノバルティスファーマのキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法「キムリア点滴静注」(一般名:チサゲンレクルユーセル)が患者1人当たり3349万3407円で薬価収載された。米国では薬価が約5000万円と超高額薬剤であり、国内価格が注目されていたが、欧米を下回る価格となった。
キムリアは、患者の末梢血から採取したT細胞にCD19を標的とするCARを発現させ、その細胞を静脈内に点滴投与する治療法。再発・難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病、再発・難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の適応で承認を取得した。CAR-T療法を採用した国内初の再生医療等製品となる。
細胞採取、調製・凍結、投与後の副作用管理が行える医療機関や医師のみに限定する条件付き承認となっている。ただ、患者一人ひとりに合わせて製造されることから、製造コストが膨らみ、米国で約5000万円、英国で約4120万円と、非常に高額な薬価が設定され、国内での保険適用のあり方が注目されていた。
今回、キムリアの薬価は原価計算方式で算定。製品総原価や流通経費などを積み重ねて算出した3072万7896円に、既存の治療方法で効果不十分な症例に有用性が示されていることなどから有用性加算35%、市場性加算10%を上乗せした結果、患者1人当たり3349万3407円と設定した。
根本匠厚生労働相は、「対象患者数は220人程度と予測されていることから、医療保険財政への影響は限定的」との考えを示した。一方、支払側の健康保険組合連合会と全国健康保険協会も、キムリアが患者に必要な医療を届ける観点から「極めて重要」と評価しつつも、公的医療保険の給付範囲について除外も含めた見直しを検討するよう要望した。医療費の高騰が叫ばれる中で、高額薬剤の登場が日本の薬価・医療制度を抜本的に見直す機会となっている。
【厚労省研究班】薬剤師数、将来余剰と予測‐対人シフトで需要拡大も
対物から対人業務へのシフトが薬剤師需要を拡大させる大きな鍵になりそうだ。薬剤師の需給動向を調査・研究している厚生労働省の研究班は、2043年度までのシミュレーションを行い、「薬剤師の総数としては、今後数年間は需要と供給が均衡している状況が続くが、長期的に見ると、供給が需要を上回ることが見込まれる」との報告書をまとめた。ただ、今回の推計は薬剤師の業務実態が現在と変わらないことを前提としたもので、「今後、薬剤師に求められる業務への対応や調剤業務の効率化などの取り組みによって必要性は変わり得る」と指摘している。
調査は、「かかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携に関する調査研究」の18年度分担研究報告「薬剤師の需給動向の予測および薬剤師の専門性確保に必要な研修内容等に関する研究」(分担研究者:長谷川洋一・名城大学薬学部教授)が実施したもの。18年度から43年度までの25年間の動向を需要と供給に分けて予測した。
需要の見通しは、薬局や医療機関に勤務する薬剤師が全体の約8割を占める傾向に大きな変動がないことを前提とし、65歳以上の人口や処方箋受け取り率、病床数の今後の推移を踏まえ、機械的に試算した。
その結果、薬局薬剤師は43年度には21万1000人の需要となり、18年度の17万7000人に比べて3万4000人の増加が見込まれた。また、病院・診療所の薬剤師は、18年度に5万9000人の需要となり、25年度に5万8000人に減少してから43年度まで同じ需要が見込まれた。
これら結果から、薬剤師の需要動向について、「今後数年間は需要と供給が均衡している状況であり、長期的に見ると薬剤師の供給数が需要を上回ることが示されている」と結論づけた。
ただ、推計は現在の業務の実態が変わらないことを前提に必要となる薬剤師数を機械的に推計したものであり、「対物業務を効率化したとしても、対人業務を充実させることで薬剤師の需要は高くなることが予想される」と指摘。一方で、調剤業務のみに特化し続ければ、「機械化などにより、地域の薬剤師ニーズは減少すると考えられる」と見通した。
その上で、「中長期的な視野で薬剤師が目指すべき方向性をしっかりイメージし、薬剤師に求められる業務に取り組んでいくことが必要」と提言した。