大阪薬科大学の学生と教職員が連携して企画した、オンラインでの病院合同説明会が4月6、7日に開かれた。38病院の薬剤師がウェブ会議システム「Zoom」を通じて、自施設の特徴や求人内容を就職活動中の薬学生に伝え、質疑にも応じた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各大学で開催予定だった就職説明会は軒並み中止に追い込まれている。こうした状況に機敏に対応した学生からの発案に大学側が柔軟に応じ、今回の企画が実現した。オンライン説明会はほかにも開かれており、感染収束にメドが立たない中で今後、ウェブでの開催が増えそうだ。
オンライン合同説明会は2日間に渡って各日の正午から午後5時頃まで開かれた。病院薬剤師はそれぞれの職場から、パソコンやスマホの画面越しにスライドなどを提示し、自施設の特徴や職場環境、求人内容などを学生に伝えた。パワーポイントで作成した資料を提示する病院が多かったが、調剤室で働く薬剤師の様子を背景に映しながら説明したり、事前に作成した動画を使って説明したりする病院もあった。
学生は主に自宅からスマホ等で参加。病院薬剤師の説明を聞き、ウェブ会議システムのチャット機能を使って質問を投げかけた。
説明会には全国各地の38病院が参加した。説明や質疑応答に費やす1病院の持ち時間は20分。会議システム内には三つのルームが設けられ、複数の病院が同時並行で説明を行った。学生は入りたいルームを選んで参加し、2日間で最大14病院の説明を聞くことができた。6年生を中心に大阪薬大、京都薬科大学、神戸薬科大学の学生345人が参加。一つのルームには平均60人弱の学生が入室し説明を聞いた。
今回のオンライン説明会は学生による発案で実現した。大学側に投げかけたのは大阪薬大の6年生、松村歩美さんだ。松村さんは2月下旬に有志が集まって発足した「全国薬学オンライン合同説明会」の主要メンバーの1人。この団体は松村さんと、薬局運営などを手掛けるバンブーの竹中孝行代表取締役らがツイッターを介して意気投合し立ち上げたもので、3月8日に初めてのオンライン説明会を開いた。この説明会には薬局やドラッグストアを中心に37社が参加し、全国の薬学生177人がウェブで説明を聞いた。
松村さんは3月6日に大阪薬大の担当部署を訪問。3月8日のオンライン説明会を大阪薬大の学生にも周知してほしいと依頼した。大阪薬大では2月20日に合同説明会の開催が予定されていが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になっていた。「大阪薬大でも就活に困っている学生がいるだろう。自分の大学の学生にも伝えたいと考えた」と松村さん。この訪問が契機になって松村さんが教職員にノウハウを提供。大阪薬大の学生有志とキャリアサポート部教職員の共催で、4月6、7日にオンラインでの病院合同説明会を開くことが決まった。
その結果について松村さんは「学生が345人も集まり、大成功と言っていい。オンラインならではの特性として席数に関係なく、聞きたい病院の説明を聞くこともできた。参加した学生からも『説明会が中止になり意気消沈する中、オンラインでの説明会があって良かった』との声がある」と話す。
前年度までキャリアサポート部長を務めた福永理己郎教授も「既存の合同説明会に比べ、多くの病院の説明を聞く機会があった。学生も自宅で気楽に聞くことができたのではないか」と振り返る。
学生主体で運営されたことも特徴だ。開会や閉会の司会進行は松村さんら2人の学生が担当し、各ルームの進行も7人の学生が仕切った。運営に関わった大阪薬大の6年生、中川あやさんは「知っている学生が進行を担当するから協力しよう、質問しようという意識が、参加した学生にあったと思う。学生主体の方が緩やかな雰囲気になる」と語る。
大阪薬大は今後も機会に応じて、オンライン説明会の活用を検討する計画だ。松村さんは「今後も続けたい。5年生や4年生にバトンを渡し、私は後輩につなぐ基盤作りに尽力したい」と話す。
2月下旬に発足した「全国薬学オンライン合同説明会」はその後、3月6日の初開催を皮切りに、引き続き説明会を何度も開催している。新型コロナウイルス感染症の収束にメドが立たない中で、大阪薬大のほかにも今後、ウェブを活用した説明会の開催は増えそうだ。