【厚労省が省令改正案】初回オンライン指導恒久化‐薬剤師は研修受講必須に
厚生労働省は2021年11月30日、初回からのオンライン服薬指導を可能とする医薬品医療機器等法の一部を改正する省令案を公表した。新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、初回からのオンライン服薬指導を可能とした時限的・特例的措置を薬機法に反映し、恒久化する方針。ただ、実施手段はテレビ電話などの情報通信機器のみとし、電話は認めない。今年度内に公布する予定。
オンライン服薬指導をめぐっては、2020年4月に新型コロナウイルス感染症拡大に伴う時限的・特例的措置で初回からの実施が可能になり、薬機法でも同様の位置づけにするかを検討していた。
改定案では初回からのオンライン服薬指導が実施可能になるよう要件を見直す。オンライン診療と訪問診療以外で交付した処方箋でも実施が可能とした。
薬剤師が患者に関する情報を把握した上で、薬学的知見に基づきオンライン服薬指導の実施可否を判断する必要があることを明記する。
オンライン服薬指導の実施に当たっては、同一の薬剤師が直接の対面による服薬指導を組み合わせて行うことを原則とし、やむを得ない場合は予め患者の同意を得ていれば、当該薬局の他の薬剤師がかかりつけの薬剤師と連携して行うことは妨げないとした。
注射薬や吸入薬など使用に当たって手技が必要な薬剤については、受診時の医師による指導の状況や患者の理解度などに応じ、薬剤師がオンライン服薬指導を適切に行うことが可能と判断した場合に限り、実施することとした。
また、オンライン服薬指導を行うに当たり、患者に初めて調剤する薬剤については、▽事前に薬剤情報提供文書等を患者に送付してから服薬指導を実施する▽薬剤が患者の手元に到着後速やかに薬剤の使用方法の説明などを行う▽薬剤交付後の服用期間中に、服薬状況の把握や副作用の確認などを実施する▽患者の服薬状況等の必要な情報を処方した医師にフィードバックする――などの要件を新たに規定した。
介護施設の患者に対する初回のオンライン服薬指導も認める。留意事項として、患者ごとにオンライン服薬指導の実施可否を判断すること、複数人が入居する居室の場合において患者のプライバシーに十分配慮すること、患者の状態などで薬剤師が介護者の付き添いが必要と判断した場合は介護者などを同席させることも規定した。
薬局開設者は、オンライン服薬指導を実施する薬剤師に必須となる知識を習得するため、厚労省が定める研修を受講させなければならないことを明記。オンライン服薬指導を行う時間や使用可能な情報通信機器、薬剤の配送方法、費用の支払い方法を薬局内の掲示やホームページで周知するよう求める。
今年度中に公布する。今後の検討課題は、初診のオンライン診療が認められた場合の運用体制だ。初診のオンライン診療は抗精神病薬や麻薬などハイリスク薬の処方は対象外とする方向性だが、オンライン服薬指導については薬剤師が工夫して対応すれば初回からハイリスク薬を対象としても差し支えないとの考えを示す。
(2021年12月03日掲載)
22年度改定、基本方針を概ね了承‐薬局の対人業務転換を推進
社会保障審議会医療保険部会と医療部会は2021年12月9日、2022年度診療報酬改定の基本方針を概ね了承した。薬局における対人中心の業務への転換推進に向けた重点化と適正化を図ること、臨床上必要性の高い医薬品の安定供給確保などを明記。基本方針は、翌日の中央社会保険医療協議会総会に報告された。
基本方針は、▽新型コロナウイルス感染症にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築▽患者・国民に身近で安心・安全で質の高い医療の実現▽効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上――などの項目で構成。特に、効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築は「重点課題」に位置づけた。
具体的には、服薬状況等の一元的、継続的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導が行われるよう、かかりつけ薬剤師・薬局の機能評価を推進すると記載。その際、薬学的管理など対人中心の業務への転換を推進するために「所要の重点化と適正化」を行うとした。
質の高い在宅医療を実現するため、医療と介護で切れ目のない地域の実情に応じた提供体制を構築し、効率的・効果的で質の高い訪問薬剤管理指導の提供体制を確保するとした。
地域包括ケアシステム推進を目的に、医療機関と薬局の連携も含め、医師や薬剤師等による多職種連携・協働の取り組みも進める。
患者・国民に身近で安心・安全で質の高い医療の実現の項目では、臨床上必要性の高い医薬品の安定供給確保に取り組むほか、革新的医薬品におけるイノベーションを含めた先進的な医療技術の適切な評価、医薬品医療機器等法に基づいたルールの見直しを踏まえ、オンライン服薬指導の適切な評価も行う。
かかりつけ機能評価の推進、対人中心への業務転換を進めるため、重点化と適正化のほか、病棟薬剤師業務も適切に評価する。
効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上では、23年度末までに全都道府県で後発品の数量シェア8割以上の新目標を実現するための取り組みを進めるほか、バイオ後続品の使用促進の方策も検討する。
費用対効果評価制度を活用し、革新性が高く市場規模が大きいなどの医薬品に同制度を活用し、適正な価格設定を行うとした。長期収載品については、薬価算定基準を見直して評価の適正化を図る。
医師・病棟薬剤師と薬局薬剤師が協働して医薬品の適正使用に努めることも明記し、重複投薬やポリファーマシーへの対応、一定期間内に処方箋を反復利用できる方策を検討する。また、OTC類似医薬品など既収載品の保険給付範囲見直しも検討する。
(2021年12月13日掲載)
【20年度医療経済実態調査】薬局の利益率ほぼ横ばい‐大病院門前、敷地内は上昇
厚生労働省は2021年11月、医療機関や薬局の経営状況を調べた「医療経済実態調査」の結果を公表した。2020年度の保険薬局の利益率は診療報酬改定前の19年度から0.2ポイント減の6.5%となった。新型コロナウイルス感染症関連の補助金を含めると横ばいだった。個人、法人問わず、新型コロナウイルス感染症関連の補助金を含めても診療報酬改定前の19年度より利益率が低下した薬局が多く見られる一方、「大病院の門前薬局」「診療所敷地内薬局」は大幅に利益率が上昇していた。
調査は、保険薬局1892施設(有効回答数904施設、有効回答率47.8%)、病院2305施設(1218施設、52.8%)、一般診療所3114施設(1706施設、54.8%)、歯科診療所1064施設(625施設、58.7%)を対象に実施。
薬局の利益率を開設者別に見ると、個人(41施設)が19年度の11.4%から20年度に9.9%と1.5ポイント低下した。新型コロナウイルス感染症関連の補助金を含めた場合の利益率でも、1ポイント低下した10.4%だった。
法人(863施設)も6.6%から0.2ポイント低下した6.4%で、補助金を含めた場合は同率の6.6%だった。
薬局の経営状況を立地別に見ると、個人が開設する「診療所の門前」(25施設)の利益率が11.3%から1.5ポイント低下の9.8%、補助金を含めても10.3%だった。ただ、「500床未満の中小病院」(3施設)では6.2%から0.9ポイント増加した7.1%だった。
法人では、「診療所の門前」(487施設)の利益率が7.0%から6.1%、「500床未満の中小病院の門前」(147施設)が6.0%から5.3%に低下した反面、「500床以上の大病院の門前」(28施設)では、4.5%から7.0%と2.5ポイント上昇した。
また、「診療所敷地内」(4施設)も、7.6%から13.2%と5.6ポイント上昇し、高い利益率を示した。
薬局の常勤職員の1人当たり平均給与を調査した結果では、法人の「管理薬剤師」は賞与を含め、19年度の730万円から1.2ポイント低下の721万円で、「薬剤師」も484万円から2.2ポイント低下の474万円だった。個人の薬剤師も382万円から3.6ポイント低下し、368万円だった。
病院の常勤薬剤師の1人当たり平均給与は、556万円から1ポイント低下の550万円となり、「医療法人」の薬剤師が528万円から525万円と0.5ポイント低下し、「公立」も597万円から0.6ポイント低下の594万円だった。一方、「国立」は567万円から0.8ポイント上昇して572万円となった。
(2021年11月26日掲載)
【名市大グループ】薬局の介入でロコモ抑制‐薬剤師が住民に定期的指導
地域住民に月1回の頻度で薬局に来てもらい薬剤師が片脚立ちやスクワットの指導を行うと、ロコモティブシンドロームの抑制につながる可能性があることが、名古屋市立大学薬学部のグループが実施した臨床研究で明らかになった。何も指導しなかった対照群に比べて、薬局薬剤師が定期的に指導した介入群では様々な指標でロコモの進展を抑えられる傾向が認められた。
臨床研究は、愛知県と静岡県の11薬局を対照群4薬局と介入群7薬局に分け、参加する地域住民を募集。その中から、年齢65歳以上85歳未満、ロコモ度1の基準を満たす人を選別し、同意を得て研究に参加してもらった。
両群の参加者には、開始時にロコモ度を調べる3種類のテストや、下肢筋力、開眼片脚立ち時間などの測定を実施した。
介入群では、初回に薬剤師がロコモを予防するトレーニング、いわゆるロコトレを30分ほどかけて指導した。ロコトレは、片脚立ちを左右1分間ずつ1日3回、1セット5~6回のスクワットを1日3セット行うもの。毎日自宅で取り組んでもらい、実施状況をロコトレ健康手帳に記録してもらった。
1カ月ごとに薬局に来てもらい、薬剤師が記録を確認すると共に、開眼片脚立ち時間の測定とロコトレの指導を実施。前向きな言葉をかけ、継続的な取り組みを後押しした。
対照群には何も介入せず、両群共に6カ月後に初回と同様の測定を実施した。
対照群32人、介入群22人のデータを解析した結果、対照群よりも介入群の方が、6カ月後にロコモ度が改善した割合は高いという傾向が認められた。
ロコモ度は、25項目の質問に5段階で回答してもらうロコモ25のほか、立ち上がりテスト、2ステップテストの3種類で評価する。点数が大きいほどロコモが進んでいることを表すロコモ25は、対照群では6カ月後には平均で1.5点増えていたが、介入群では平均でマイナス2点となり、有意に改善していた。
介入群のロコトレ実施率は6カ月間を通して良好で、概ね高く維持されていた。
研究代表者で、今年度から昭和薬科大学教授に就いた菊池千草氏は「薬局を1カ月に1回訪問し、薬剤師のチェックを受けることがモチベーションの維持に役立ったのではないか」と語る。
(2021年12月15日掲載)
【21年版MR白書】MR総数が7年連続で減少‐3000人超える過去最大幅
2021年3月末時点のMR総数は前年比3572人減の5万3586人となり、3年連続で過去最大の減少幅となったことが、MR認定センターがまとめた「2021年版MR白書」で明らかになった。3000人を超える大幅な減少となり、7年連続でMR数の落ち込みに歯止めがかからない厳しい状況が続いている。減少したMR数のうち、MR雇用規模が1000人以上の企業のMRが約半数以上を占めたが、「500~999人」の企業が1599人減と前年から大きく減らしており、中堅製薬企業での落ち込みが目立った。
MR総数は、13年度の6万5752人をピークに、14年度が1095人減、15年度が522人減、16年度が950人減、17年度が752人減、18年度が2533人減、19年度が2742人減となっており、20年度は過去最大の3572人減と前年度に比べてさらに落ち込みが大きくなり、7年連続の減少となった。
認定取得者は3603人減の5万2455人で、MR認定証取得率は97.9%とわずかに減少した。管理職(マネジャー)数も469人減の8248人と前年の増加から減少に転じた。
MR雇用規模別のMR数は「99人以下」が40人減、「100~299人」が96人増、「300~499人」が60人減、「500~999人」が1599人減と前年から大きく減らしており、「1000人以上」の大企業も1969人減と356人減少した。引き続き大手製薬企業で減少が大きかったが、特に中堅企業でのMR数の落ち込みが目立った。
企業別に見ると、内資系企業が1962人減の3万1501人と減少幅が最も大きく、次いで外資系企業が1610人減の1万8101人、卸が6人減の61人、CSOは6人増の3923人となった。
薬剤師のMRは、279人増の5276人と増加に転じた。MR総数に占める薬剤師MRの比率は1.1ポイント増の9.8%となった。
MRの新卒採用を行った企業は前年から2社減の83社。そのうち、内資系企業が69社、外資系企業が13社となり、新卒採用を行った企業数比率41.7%と前年度から0.8%減少した。中途採用した企業は113社で前年度から8.2%の減少に転じた。
(2021年11月19日掲載)