クローズアップ 認定・専門薬剤師 2014/2015 ‐妊婦・授乳婦領域‐

2014年9月10日 (水)

薬業界情報


妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師、妊婦・授乳婦専門薬剤師

母体と胎児・乳児の健康と安心を支えるために…

 妊娠、授乳期の女性は胎児・乳児の命を育むために、生理的・身体的に大きな変化を経験します。合併症を有する妊婦・授乳婦が健康に生活できることは、本人ばかりでなく胎児・乳児の健康に対しても大変重要なことです。

 母体に使用された薬は、胎盤を介して胎児へ移行するため胎児への影響を慎重に判断する必要があります。しかし、倫理的な配慮から研究自体が少なく医療関係者でも判断が困難になることがあり、結果として十分な説明が得られないまま不安になる妊婦も少なくありませんでした。また、母乳が栄養学的に優れているだけでなく、乳児の感染予防、生活習慣病予防に良い影響をもたらすことが明らかとなり世界的に母乳保育が推奨されています。しかし、母乳に移行した薬が乳児に及ぼす影響を評価した研究自体が少なく、母乳保育を自信を持って推奨できずにいる医療関係者や、母乳で育てたいとの思いを断念する女性が少なくありません。

 そのため、国内外の最新かつ網羅的な医薬情報を調査・評価するとともに、自らも胎児曝露データの疫学研究や母乳中薬物の解析研究を行って判断根拠を構築し、産婦人科医、小児科医、原疾患の主治医、助産師と連携して、最善の薬物療法を提案する役割を担っています。また、妊婦・授乳婦の薬への不安を解消して、母児の安心と健康を支援するための妊婦・授乳婦カウンセリングを担当しています。

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妊婦・授乳婦領域の認定・専門薬剤師の仕事は…
情報調査と薬学的評価に基づく医師との協働
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 薬の有効性と安全性は、治験において研究され情報が添付文書に反映されます。しかし、妊婦・授乳婦への薬物療法に関しては、胎児毒性、乳児毒性が未知なため倫理的配慮から治験が実施されません。このため胎児・乳児における安全性データは極端に不足している状況があります。そのため国内外の文献調査、製薬企業や厚生労働省等のデータを収集し、最新かつ網羅的な医薬情報の中から、母体の疾患治療に有効で、胎児・乳児への安全性が高い薬を選択する正確な判断根拠を医師や相談者に提案する役割を担っています。

妊婦服薬カウンセリング
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 何らかの疾患を有する女性が妊娠することは稀ではありません。十分な情報と分かりやすい解説を提供するとともに、妊婦の不安にこたえるためのカウンセリングを実施することは重要な仕事となります。妊娠・出産に関連するベースラインリスクと比較して、薬のリスクが実在しないこと、リスクが存在するとすれば何%なのか、健常児を得る確率は違わないのか等、リスクコミュニケーションスキルは多様ですが、妊婦の安心と母児の健康のために、妊娠・出産と薬に関連した相談者の意思決定を支援します。

 また、妊娠と気付かずに妊娠初期の胎児過敏期に薬を使用し、不安なあまり妊娠の継続を躊躇する女性にも、実在するリスクの有無を客観的に解説して、無用な不安の解消につながるカウンセリングを担当しています。

授乳婦服薬カウンセリング

 母乳栄養は、母児の健康に大きなメリットがあります。しかし、薬を使用中のため、母乳経由で乳児が摂取する薬の影響を心配して、授乳を断念する女性も少なくありません。

 母乳中への薬物・代謝物の移行や経時変化、新生児の薬物クリアランスなどを評価して、産婦人科医、小児科医に実在するリスクの有無や程度をもとに母乳育児の可能性を提案して、授乳に関する医療職のコンセンサスを形成することは、役割の一つです。コンセンサスに基づいて、授乳婦へのカウンセリングを担当し、母乳育児の乳児メリットと母乳に移行した薬物の乳児リスクの有無や程度を説明し、相談者の意思決定を支援します。わずかなリスクが否定できないケースでは乳児評価も行ってリスク回避に取り組みます。

胎児薬物曝露例の疫学研究、母乳移行薬物の解析研究
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 製薬企業にとっても処方医にとっても、妊婦・授乳婦への薬物療法による胎児・乳児への影響を判断するための情報は不足しています。薬剤師自らがカウンセリングを担当した妊婦の同意を得て、出産結果を集積して疫学研究を実施したり、授乳婦の同意を得て母乳サンプルを解析して薬物移行性の評価を行うことが必要な現状があります。妊婦・授乳婦専門薬剤師は医療現場の科学者の一人として、薬の専門家として、母児の健康につながる臨床判断ができるような研究を担っています。


<提供>
一般社団法人 日本病院薬剤師会
〒150-0002
東京都渋谷区渋谷2-12-15 日本薬学会長井記念館8階
TEL:03-3406-0485 FAX:03-3797-5303
URL:http://www.jshp.or.jp/

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