クローズアップ 認定・専門薬剤師 2014/2015 ‐HIV感染症領域‐

2014年9月10日 (水)

薬業界情報

HIV感染症薬物療法認定薬剤師、HIV感染症専門薬剤師

服薬アドヒアランスを高め、薬を安全に使用するために…

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染によって発症する後天性免疫不全症候群(AIDS)による死亡者数は、1990年代の終わりに登場した多剤併用療法によって著しく減少しました。その後、新薬の開発は続き、服薬回数や1回に服用する錠数の減少、副作用発現率も低下し、治療は急速に、かつ着実に進歩を遂げています。

 しかし現在の治療法では、ウイルスを体の中から完全に排除することができないため、患者は一生薬を飲み続ける必要があります。さらに、治療を成功させるためには100%近い服薬率を保つことが必要とされており、長期にわたって高い服薬率を保つためは、患者が積極的に治療に参加し、自らの意志で服薬を続けること、つまりアドヒアランスを高めることが成功の鍵を握っているので、高いコミュニケーション技術と、きめ細かい服薬援助が求められます。

 一方、急速な進歩を遂げた抗HIV薬ですが、国内では治験を実施するための患者数を確保することが難しいことから、日本人での治験が行われず、海外で実施された臨床試験の結果を審査し、迅速承認されています。したがって、薬物動態や副作用、相互作用に注意し、海外の最新情報を収集しながら、薬を安全に使用できるよう、チームの一員として患者を支える必要があります。

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HIV感染症領域の認定・専門薬剤師の仕事は…
最適な治療に貢献し、薬物療法を有効かつ安全に行う
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 国内治験が行われていない抗HIV薬を有効かつ安全に使用するためには、企業から提供される情報のみならず、海外の最新情報を収集する必要があります。また、抗HIV薬は多剤併用療法が行われることに加え、日和見感染症治療薬などの薬剤が併用される例も多いため、薬剤個々の薬物動態を十分に把握し、相互作用を理解し、処方の確認を行うことが求められます。多くの病院で、医師が抗HIV薬を処方する前に患者と面談し、患者のライフスタイルなどを確認しながら薬剤情報を提供しています。患者の希望する薬剤の組み合わせについて相談した上で、その結果を医師に情報提供するなど、処方支援を行っています。

アドヒアランスを高める服薬援助

 「アドヒアランス」という概念が、広く世界で、また日本で知られるようになった要因のひとつに、HIV感染症診療があげられます。HIV感染症患者に対して、大きく分けて、処方決定前、服薬開始前、服薬開始後、服薬継続期の4つの時期に介入します。服薬を阻害する因子には、服薬タイミングの困難さや食事との関係、服薬を人に知られたくないことや、副作用、薬の管理方法、日常生活の中での服薬の困難さなどがあげられます。高いコミュニケーション技術を使いながら、患者の自己決定を尊重した服薬援助を行っています。

社会的問題、医療制度や予防啓発にも精通

 HIV感染症は多くの社会的問題を含んでいます。HIV感染症の治療を患者支援の立場から行う際、薬害エイズや人権問題など、社会的な問題や背景を理解することが重要です。また、HIV感染症治療に関連する医療制度や社会資源に関する知識も求められます。保険薬局で活躍する薬剤師にも、HIV感染症の専門性は必要です。今後、感染拡大を防ぐ観点から、保険薬局で活躍する薬剤師にもHIV感染症に関するより深い知識と理解をもち、地域における予防啓発への貢献が求められています。

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<提供>
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