クローズアップ 認定・専門薬剤師 2014/2015 ‐活躍する薬のエキスパート‐

2014年9月10日 (水)

薬業界情報

「認定・専門薬剤師」 が活躍しています。

チーム医療の中で薬のエキスパートとして専門的な知識と技能で貢献しています。

 医療は、医学や薬学の進歩とともに高度で複雑化しています。

 医師をはじめ医療スタッフは、患者に最善の治療を提供するために、いろいろな職種がチームを組み、連携して治療にあたっています。

 この医療チームの一員として医師や看護師とともに臨床の現場に立ち、効果的な薬物治療を行うために活躍している薬剤師が増えています。

 最近では、がん治療での分子標的治療薬など新たな薬剤も登場し、専門領域での最新の知識・技能が薬剤師に求められるようになってきました。

 このような背景から誕生したのが「認定・専門薬剤師」です。各専門領域の医・薬学の知識、医療・薬物治療に関する高度な知識と技能を持っている薬のエキスパートです。医療の場で役立つ最新の薬学的専門情報をつねに医療スタッフに提供し、患者への治療がより効果的で安全に行えるように活躍しています。

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「認定・専門薬剤師」の仕事
知識

 専門領域の治療薬や薬物療法について熟知しています。患者が安心して、安全な薬物治療を受けられるよう、最新の薬物療法や治療薬の情報を収集し、評価・活用しています。例えば、患者一人ひとりの状態をよく考えながら、これから使う薬が妥当なものかどうかを医師と協議し、副作用がひどくなることを避けたり、薬物治療に特別な工夫が必要な患者への処方の組み立て方法を支援しています。

経験

 専門領域の薬物治療の経験が豊富です。この臨床経験が次の段階の治療方針に生かされます。「ハイリスク医薬品」(安全な使用のため特別な配慮が必要な薬)の適正な使用や、病状が重くなることが懸念される患者への「薬学的管理(服薬指導・医薬品情報提供・薬物治療モニタリング等)」を積極的に実施しています。また、医療の中で患者を取り巻く環境を改善するなど、薬物治療以外の問題についても医療チームの一員として取り組んでいます。

研究

 専門薬剤師は、専門領域における最先端の薬物治療について研究を行い、その成果を学会や学術雑誌に報告しています。例えば、抗がん薬の新しい組み合わせによる治療効果や副作用の改善などについて研究を行っています。これらの研究成果は医療技術を進展させ、よりすぐれた薬物治療の開発にも貢献しています。

教育・指導

 専門薬剤師は、後進の薬剤師の育成やこれから薬剤師をめざす薬学部学生への教育を積極的に行っています。さらに、専門領域をめざす薬剤師、病院内の医師や看護師等を対象にした勉強会や研修会においても教育・指導を担っています。


病院薬剤師の主な仕事
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・調剤(処方せんを監査し、薬を調製)
・製剤(市販されていない薬剤を病院で調製)
・無菌調製(輸液、抗がん薬などを正確かつ安全に調製)
・服薬指導(薬の飲み方や注意点などの説明・指導)
・薬品管理(医薬品の特性を考慮した保管管理)
・医薬品情報提供(薬の効果や副作用の情報を収集、管理、提供)
・病棟業務(入院患者への薬学的管理・服薬指導、医薬品の情報提供・管理)
・外来業務(外来患者への薬学的管理・服薬指導、医薬品の情報提供・管理)
・試験研究(医薬品の安定性試験、院内製剤品質試験、医薬品の適正使用のための試験研究など)
・薬物治療モニタリング(体内の薬の濃度を測定、適正な薬の使用量や投与方法を提案)
・教育(薬学生や他の医療スタッフへの教育)
・治験(治験薬の管理、被験者への説明)


現在、専門性が必要とされる5つの領域で活躍しています。

 日本病院薬剤師会は認定・専門薬剤師を認定しています。

 現在、1:がん、2:感染制御、3:精神科、4:妊婦・授乳婦、5:HIV感染症の5つの領域で認定薬剤師、専門薬剤師が認定されています。

がん:薬物療法認定薬剤師・専門薬剤師、精神科:薬物療法認定薬剤師・専門薬剤師、HIV感染症:薬物療法認定薬剤師・専門薬剤師

 専門領域の病気を深く理解し、薬の専門知識を生かすとともに、患者を取り巻く環境などを考慮して、安全で効果的な薬物治療を推進しています。

妊婦・授乳婦:薬物療法認定薬剤師・専門薬剤師

 妊娠・授乳期の薬に関する高度な知識と正確な情報収集技術で、母子への薬の影響を考え、医師と連携して母子の健康に貢献しています。

感染制御:認定薬剤師・専門薬剤師

 細菌やウイルスなどの病原体の感染、消毒薬や抗菌薬に対する高度な知識を持って、患者の安全と安心できる治療環境を提供するために幅広く活動しています。

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専門薬剤師・認定薬剤師とは…

第3条 専門薬剤師とは、本会専門薬剤師認定審査に合格し、特定の専門分野における薬物療法等についての十分な知識を用いて、各医療機関において質の高い業務を実践するとともに、他の薬剤師に対する指導的役割を果たし、研究活動等についても行うことができる能力を有することが認められた者をいう。

第4条 認定薬剤師とは、本会認定薬剤師認定審査に合格し、特定の専門分野における薬物療法等についての十分な知識と技術を用いて、各医療機関において質の高い業務をしていることが認められた者をいう。

(専門薬剤師・認定薬剤師認定制度規定より抜粋)


専門薬剤師になるには?

 「専門薬剤師」になるには、まず各専門領域において薬物治療の実際的な能力が必要とされ「認定薬剤師(領域別)」の認定を受けていなければなりません。

 この資格は各専門領域での実務経験や実績、一定期間の研修や講習で知識と技能を高め、試験に合格することで認定されます。その上で各専門領域の研究業績が吟味されてはじめて当該領域の「専門薬剤師」と認定されます(下図参照)。また、認定を受けた後も5年毎の資格更新が必要です。

 これは、医学、医療の進歩に遅れないよう知識を高める必要性があるからです。こうして認定された「専門薬剤師」は、薬剤業務に加え医療スタッフへの教育や指導も担います。

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認定・専門薬剤師が活躍できる医療現場をめざして
薬剤師教育が変わりました

 大学での薬剤師教育は、平成18年4月より6年制になりました。従来の基礎薬学に重点が置かれた教育から、さらに病院や薬局での実務実習が必須化され、医療現場に即した教育などが充実されてきています。医師と同様に6年間の教育を経て卒業してきた薬剤師は、従来にも増して患者に寄り添った貢献ができるはずです。

認定・専門薬剤師の役割は、チーム医療の中で重要です

 現在、医師や看護師不足が叫ばれています。医師が医療のすべてを担うには限界があり、チーム医療の中で医療スタッフがそれぞれ責任を分担する時代がきています。認定・専門薬剤師は、その専門領域の薬のエキスパートとしての活躍が期待されています。

 例えば、薬物治療の安全と質を確保する上で、血液の中の薬物濃度をモニターしたり、心電図に影響を及ぼす薬剤の使用中には心電図検査をモニターするなど、患者の状態を確認し、治療にかかせない情報を集めることもできます。また、抗がん薬の投与設計や用量の増減などについても責任を持って行う能力を備えています。多くの病院では、医師と協力して、がん化学療法の説明を実施しています。薬にかかわることは、薬剤師が責任を持って行っています。

医療をより充実させるために

 現在、薬剤師は十分誕生していますが、医療経済環境の厳しさから病院への配置は抑えられ、病院薬剤師の人員が不足しています。そのため、専門資格を取ってもその専門領域に集中できないという現実があります。認定・専門薬剤師にその能力を発揮させるには、薬剤部門の人員の充実も大きな課題です。

 今後、より一層の認定・専門薬剤師が活躍できる医療現場になることを願っています。


<提供>
一般社団法人 日本病院薬剤師会
〒150-0002
東京都渋谷区渋谷2-12-15 日本薬学会長井記念館8階
TEL:03-3406-0485 FAX:03-3797-5303
URL:http://www.jshp.or.jp/

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