【薬剤師になる前に~今だからOTC医薬品を学んでおきましょう!】第4回 OTCの活用2:薬局(リアル)とインターネット(バーチャル)とでOTC販売は違うの?

2015年9月1日 (火)

薬学生新聞


(株)スギ薬局、日本薬剤師会一般用医薬品等委員会委員
藤田 知子

藤田知子氏

 OTC薬販売は、薬事法(現:薬機法)等、いろいろな制度・規制の影響を受けて変化してきた歴史があります。1990年代にはその販売制度に大きな転換期がありました。大規模小売店舗法の規制緩和、医薬分業の進展、再販制度の廃止などです。今では当たり前の風景ですが、これらを契機にドラッグストアや調剤をメインとする薬局店舗数が増え、OTC薬販売でも価格競争が起き、店頭でのディスカウント合戦も常態化してきました。

 それから、09年の改正薬事法の施行に伴い、一般用医薬品の販売区分が再設定され、販売方法も変わり、消費者の目にもその変化が見えるものとなりました。それでも、OTC薬等、薬事法に規定されている商品は販売規制に守られていたといえます。13年の改正薬事法の施行により、これまで認められていなかった第1類医薬品のインターネット販売(以下、ネット販売)が解禁となりました。一方で、薬剤師専売の医薬品(要指導医薬品)の創設や、その他の販売ルールも決められ、医薬品販売を取り巻く環境はがらりと変わりました。

 現在、ネット販売の世界は日々進化しています。さらにスマートフォン保有者の増加により、商品情報や広告の提供手法も多種多様になりました。日々、リアルタイムにネット上から情報が寄せられることもあり、医薬品に限らず、あらゆる商品をネットで購入する機会が増えるのは当然のことかもしれません。

 あるドラッグストア等では、店舗で販売している商品情報をLINEで流し、ネット上でも商品を販売する取り組みをするようになって以降、普段は店舗に買い物に来られないようなビジネスマンや、高齢者からの受注があったり、衝動的な購買行動(大量)も見られるなど、新規顧客の開拓や、多くの商品を購入する顧客のロイヤルカスタマー化につながっているようです。薬局店頭(リアル)とインターネット(バーチャル)とでOTC薬販売はどう違うのか?特に適正販売という観点から考えたいと思います。

ネット情報では適正さ欠く恐れも

 ある薬局店頭でのことです。30歳代の女性から、唐突に「ストレプトマイシンは“薬”ですよね?」と質問されました。私は、「はいそうですが」と答えると「関節炎に効くとネットに書かれていたので、ストレプトマイシンが欲しいのですが、ネットでは売ってないみたい、ここで購入したいのですが」と言われました。

 その際に、私の頭の中で考えたのは「関節炎に効く、ストレプトマイシンをネットで買おうとしたが、販売していない。ネットだから売れない薬はあるけど、薬局なら売っているはず、今、なくても取り寄せてもらえる……とこの人は考えている」ということでした。実は、こうしたネット情報をもとに来局される人は多くなっています。

 ネット上の情報としていろいろな疾病と治療方法の記載について参考にすべき点はあるかと思いますが、その情報の正確さ、表現等を疑うことは多々あります。今回のケースは、欲しいと思っている医薬品が処方箋薬であるため簡単に入手することできません。でもネット上で、気になる症状をキーワード検索したのちに推奨された薬が出てきて、それが簡単に購入できるものであったなら、自分の薬を自分で選んだという満足感も相まって、躊躇せず服用するでしょう。しかし、ネット情報の記述どおりに自分やまた家族の病気を治癒できると考えているのはどうでしょうか?

 ネット情報に頼る危険に気付いていない人が、現実には結構いらっしゃるのがではないかと思います。前述のお客さんのような問い合わせからもそのように感じるのです。

 顧客が訴える自覚症状と薬剤師から見る他覚症状とは、視点に違いがあります。薬局店頭では、症状の程度や状況を判断(臨床判断)するために薬学的知見から薬剤師がいろいろな質問をします。顧客本人は大事とは思っていないことでも実は致命的な状況にあり、
すぐに受診勧奨しないといけないということもあるのです。薬局とネット販売との大きな違いは、薬剤師が積極的な介入をすることでそれらの危険を回避していくこと、本人が訴えたい症状や状況だけでなく、それに影響を与えている周りの環境まで加味した適正販売ができることではないかと考えます。

 よくある例ですが、薬剤師が介入することで功を奏した実例を一つご紹介しましょう。

 ある患者さんで前立腺肥大の治療薬をずっと服用されているのですが、風邪の初期症状が気になりいつもと違う近くの開業医を受診し、処方されたのが「PL配合顆粒」といくつかの薬でした。薬剤師が薬歴に前立腺肥大症の治療薬を飲んでいることを確認したので、疑義照会したところ、「PL配合顆粒」は別の薬(漢方薬)に変更されました。

 病院からの処方を信じていた患者さんは薬局に来て、処方薬が変更になったのに驚き、病院に行くだけでなくて、薬局でも確認してもらわないといけないと思うようになったそうです。ネット販売では、このような背景を確認するすべはなく、前立腺肥大症に関わる症状を悪化させる可能性が高い風邪薬を服用してしまうことを回避できるでしょうか?

広めたい薬局での“よかった体験”

 以上のように、ネット販売との違いは明らかなのですが、広く国民に伝わっていないのが現状です。薬剤師が介入することの意義を知ってもらうためには、前述のような「薬局で薬を確認してもらってよかった」などのような体験が重要だと思います。ネット販売の場合は、皮肉にも「よかった体験」が掲示板などに書き込みがあるので、情報が共有されていきます。その掲示板となるべく薬局でもどんどん「よかった体験」を顧客に話すなどして共有したいものです。

 冒頭にも述べましたが、以前行われていた医薬品の販売規制は、「誤った薬の使用を防ぎ、消費者の安全性を守る~社会的規制~」ともいわれていました。時代は変わり販売体制は変わってもその「誤った薬の使用は防ぐ」という根幹は変わらずにいたいと思います。

 次回は、「消費者の安全を守る」と題し、薬の副作用についてお話ししたいと思います。



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