【慢性期医療と薬剤師】No.5 高齢患者への薬剤師としての関わり

2016年7月1日 (金)

薬学生新聞


総合病院松江生協病院
介護療養型老人保健施設「虹」兼務
足岡 秀樹

足岡秀樹氏

 これまでの4回の連載では、超高齢社会の中で慢性期医療に関わる薬剤師の指標となる業務が紹介されました。賀勢泰子先生の「急性期は命を救う医療であり、慢性期は寄り添う医療であるが、患者一人ひとりと向き合い、病態や病期に応じた薬学的ケアを提供することは変わりない」との言葉は、慢性期医療での薬剤師業務そのものだと思います。

 また、慢性期医療において薬物療法の評価にフィジカルアセスメントの導入やプロトコール(診断・治療手順)に基づく薬物治療管理を行っている病院の紹介がありました。このような業務は、以前は一部の先駆的及び献身的な薬剤師が行っていましたが、最近は実践する病院が徐々に増えています。

 高齢患者は複数の疾患を合併して多剤服用となり、これにより医療費が増大します。また、服薬管理が不十分であると飲み残しが生じます。さらには、薬剤数が多くなるほど薬物相互作用のリスクが高まり、過量投与による有害事象が発生しやすくなります。このような現状から、高齢患者の薬物療法を安全かつ確実に行うために、いま薬剤師は大きく期待されています。

療養病床・老健での業務

 私がこれまで勤務していた松江生協リハビリテーション病院は2015年4月に介護療養型老人保健施設(転換型老健とも言います)に転換しました()。一般外来はなく、医療療養病床245床の長期療養型の医療機関だった前の病院では、薬剤部門は薬剤師3人と事務員1人で、患者の入院から退院まで関わってきました。185床の介護療養型老人保健施設に転換後は、薬剤師1.4人(常勤換算)と事務員1人で、病院時代と同様の業務を行っています。

 転換後変わった点は、費用請求が医療保険から介護保険に、入所者の呼び名が「患者」から「利用者」に、カンファレンスの開催が3カ月ごとと頻回になったことです。しかし、ほとんどの利用者が一般病院からの転院です。このため、介護度や疾患重症度は同じであり、医療依存度が高く、多くの薬剤を服用しています。

 本稿では、療養病床や老健で行っている薬剤師の業務を紹介します。なお、これ以降の文章では療養病床での入院、患者などの語句を使用します。

 まず、入院時には持参薬とお薬手帳を預かり、初回面談で患者や家族から情報を収集し、薬剤の理解度や在宅復帰の方向性を確認します。その後、持参薬の情報提供と薬剤評価に必要な事項について、看護師に観察を依頼します。医師には、患者や家族の希望、思いを伝えると共に、薬学的ケア計画を提示します。

 入院中は、加齢による機能低下や体調の変化を見落とさないように心がけます。患者面談とスタッフから収集した情報を基に薬剤評価を行い、処方内容について医師と協議します。痛みや筋肉の緊張を緩和する薬剤を評価する際は、担当リハビリ技師との情報交換が特に重要です。また、病状改善や身体機能の受容を確認しながら、精神科用薬や睡眠薬の継続を考えます。

 検査値を基に、薬剤選択や用量調節を行うものは定期的にモニタリングし、医師へ処方提案します。これらによって漫然投与を防ぎ、患者の日常生活動作(ADL)の改善や薬物有害反応を回避できた事例を数多く経験しています。

 在宅での介護に多くの不安を持つ家族に対しても、薬に関連する不安が少しでも解消されるように、来院時には説明や声かけを行うよう心がけています。当院は治療への家族参加を重視し、カンファレンスには本人と家族に出席してもらいます。その場で薬剤師は、薬の変更内容を患者の状態変化と結び付けて説明すると共に観察、注意していることを話します。

 退院が近づくと、院内外の多職種が今後の療養について検討する退院調整会議を開催します。かかりつけ薬局が決まっていれば、その薬局薬剤師にも参加を依頼します。会議では、在宅で関わるケアマネジャーや居宅サービス事業所の方に、退院時の処方内容と薬の管理方法、注意事項を話します。

 退院時には、かかりつけ医や薬局薬剤師に患者のケアを引き継ぐために「薬剤師サマリー」を作成します。また、患者や家族には、入院時からの処方内容と検査値を記載したお薬手帳を渡します。

処方の見直しが重要

 療養病床では、高齢患者への不適切な多剤併用処方(ポリファーマシー)に対応し、長年服用している薬剤を見直し、在宅および次の施設で薬の管理を容易にするための処方の簡素化など、患者個々に適切な対応が求められます。また、生活の質を考えた処方の見直しが大切であり、それぞれの薬剤必要度を検討する必要があります。有効かつ安全な薬物療法を提供するために、入院から退院まで継続した病棟業務が求められています。

 療養病床や老健は一般病院と比べて入院期間が長く、薬剤の開始や中止による患者の変化を確認できることが魅力の1つです。病院全体の医療安全、感染管理、在宅復帰支援など、業務は幅広く、やりがいのあるものです。機会があれば、療養病床のある病院の見学をされてはいかがでしょうか?きっと興味を持っていただけると思います。



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