わたしの「1日」~業界の先輩に聞く~ 東住吉森本病院薬剤科 佐古守人さん

2017年1月1日 (日)

薬学生新聞


治療に参画する薬物療法のプロに

佐古守人さん

 東住吉森本病院(大阪市、329床)薬剤科の佐古守人さんは、同院で薬剤師として働き始めて12年目を迎えた。当初は「仕事が本当にできなくて周りにすごく迷惑をかけた」が、患者が少しでも良くなってほしいと一生懸命関わり続けるうちに、その姿勢は院内に浸透。経験を積み知識も広がって、医師や看護師から厚い信頼を獲得した。「質問を受けてから対応するのではなく、常に患者さんの横にいて、医師や看護師らと一緒に治療に参画できる薬物療法のプロでありたい」と語る。

 11月のある日。薬剤科内の朝礼を終えると佐古さんは9時頃、担当するHCU病棟に出向いた。ベッドサイドを回って患者の状態の変化を把握。「気になるポイントを中心にみている。状態が悪化していればその原因を推察し、医師に提案すべきことはないかと考える」という。

佐古さんの1日

 その場で医師や看護師と問題点への対応を話し合うことは多い。この日は、ある患者の対応を医師と話した。原因不明の肺炎で人工呼吸器管理中に血中リン濃度が次第に低下し、心不全や呼吸不全等の恐れがあった患者。医師から相談を受けて先週、リンの投与設計を提案した。血中リン濃度の回復をこの日に確認できたため、医師と話し合ってリンの減量を決めた。

 午前10時頃にはHCU病棟から薬剤科に戻り、入院患者の調剤業務を手伝った。午前11時には院内システム構築について副看護部長と打ち合わせ。休憩や一般病棟での業務を経て午後1時頃、薬剤科に戻ると調剤室の薬剤師から相談を受けた。

 相談内容は「注射薬処方に疑義がある」というもの。誤嚥性肺炎で入院した患者の血中ナトリウム濃度が上昇。ナトリウムの含有量が低い輸液で対応していたが、さらに減らすためにナトリウムを含まない注射用水に変更するという処方だった。しかし、それでは溶血の危険性があった。佐古さんは直接患者の状態を把握した上で、5%ブドウ糖液への変更を提案するよう助言し、病棟担当薬剤師に情報提供した。

HCU病棟で医師や看護師と今後の治療方針を話し合う

HCU病棟で医師や看護師と今後の治療方針を話し合う

 新規入院患者が多かったこの日、午後2時以降は何度も一般病棟に足を運び、初回面談や持参薬管理業務を実施。その間、実務実習生の患者面談に同行したり、再びHCUに出向いたりした。HCUで居合わせた医師からは「好酸球肺炎を疑う患者にステロイドを投与したが、それに伴う高血糖への対応を悩んでいる」と相談を受け、インスリン注射の上乗せを提案した。午後7時頃には、相談を受けて関わっている一般病棟患者のもとへ。その後、講演会のスライド作製に没頭。午後9時頃、同院を後にした。

 佐古さんは大学卒業後、「自分を鍛えたい」として、充実した薬剤師の業務が評判だった同院に就職。自信はあったが、当初は「同じミスを繰り返し、周りに迷惑ばかりかけていた」。添付文書の情報だけを見て疑義照会し、「患者をみているのか」と医師から怒鳴られた。疑問を確認するため病棟に電話をかけると、疑問点をうまく伝えられなかったために看護師からは露骨に嫌がられた。

 「苦しんでいる患者さんの役に立つことができず、それが本当につらくて毎日泣いて帰った」。それでも担当病棟の患者のベッドサイドに足を運び続けた。周囲に聞いた勉強法を実践したり、医師向けの勉強会に参加したりして研鑽を積んだ。

 どんな質問に対しても誠実に答えるうちに、まずは患者が評価してくれるようになった。ある患者は「全ての職員が佐古さんの姿勢を見習うべき」と病院宛に投書した。

 その熱意は看護師にも伝わった。「あんたやったら相談できる」と言われ、信頼を得た。知識やスキルも向上し、6~7年目には医師にもしっかり提案できるようになった。

 現在は、HCU病棟を担当しつつ、病棟担当薬剤師のリーダーとして後輩薬剤師をフォローする役割を担う。信頼関係を築いている各病棟の医師や看護師の相談にも応じる。「医師は、容易には治療できない重症患者であるほど、どうすればいいのかと真剣に悩んでいる。異なる視点で問題を共有してくれる医療者、最後まで一緒に見てくれる医療者を求めている」と言う。

 今後も「さらに成長したい」と佐古さん。「学んだことを後輩に伝え、患者さんのためになる薬剤師が1人でも増えればいい」と話している。



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