【日本CRO協会座談会】グローバルに広がるCRO

2013年7月1日 (月)

薬学生新聞


海外との意思疎通で成長

 ――植松理事長はそれに対してどう思いますか。

植松氏

植松氏

 植松 英語は、主語、述語を明確にする性質上、日本語よりも伝えやすい部分はあるとは思います。ただ、お2人がおっしゃっているように、日本語がしっかりしていないと駄目です。私も若い頃、何が主語で何を伝えたいのかと、英語の翻訳を担当している方に注意されたことがあります。

 内田 韓国・中国の人たちとコミュニケーションを取る場合、お互い第2外国語同士なので、伝わったときの嬉しさはあります。頑張って伝えてよかったな、と。

 ――これまでの話だとコミュニケーションが大事になるようですね。どうすればそのようなスキルを磨けると思いますか。

 内田 伝えたいことを分かりやすい表現で噛み砕いて、相手に伝えるのを意識しています。文章を組み立てる上では、日本語でも英語でも変わらないような気がします。

 西島 例えば、部活動で先輩が後輩にやり方を説明したり、研究室で実験内容を伝えたりする場合のような、普段のコミュニケーションでも“相手に理解してもらえるように伝える”という意識を持つようにしていると、対応が変わってくるのではないでしょうか。

 西島 ただ、海外相手だと微妙な感覚のズレを感じることがあります。こちらで文書を作成した後、欧米の製薬企業から英語でレビューが入ったときに、何を意図しているか、ときどき分からなかったこともあります。意思疎通の難しさを感じますね。

日本の手法を積極的に提案

 ――西島さんがお話しされていた日本と海外の違いですが、一木会長と植松理事長はこれを聞いてどう感じていますか。

一木氏

一木氏

 一木 通貨単位もユーロ、ドル、ポンド、円と様々です。長さの単位もインチ、メートル、など違います。医療分野でも、日本では医師の処方箋が必要な医薬品が、海外ではドラッグストアで売られているわけですから。歴史や文化が違っていれば、コミュニケーションの感覚も違うでしょう。

 植松 医薬品開発でも感覚や特徴が異なります。日本は正確性を大事にします。一方、欧米は初めに基準があってそこから外れていなければよいとの考え方を持っています。基本方針にズレがあれば、業務を進めるプロセスも変わってきますよね。

 日本の医薬品開発は、開発コストが高いことが課題になっており、医薬品を早く届けるためにも効率的な手法を取り入れる必要があるように思います。ただ、日本の製薬企業が培ってきた被験者のデータを確実に収集し、正確に解析する能力については、世界的に見てもナンバーワンと思いますので、もっとアピールしていきたいです。

 内田 私はお互いが特徴を理解することで物事が進むと思います。外国の手法を学ばなければならないところ、逆に日本の手法を理解してもらうところ、いっしょに掘り下げて話し合い、解決していく作業を大事にしています。

 確かに結果を出すまでの過程は大変ですが、その分達成感が大きいのがグローバルでの医薬品開発業務の魅力です。1つの目標を達成したときは、いろんな地域にいる仲間たちと喜びを分かち合うようにしています。遠く離れているので、直接会うのは難しいのですが、電話やメールで「おめでとう」「ありがとう」と言い合うようにしています。それが次の仕事に対するモチベーションにつながります。

 ――海外と日本とでの仕事のやりとりに、忙しさはありませんか。

 西島 常に時間との戦いです。本社が欧米にある製薬企業では、医薬品開発を進めるためのルールが頻繁に変わったりします。それに対応していく大変さはありますが、いろいろな方々と協力して問題を解決するのは楽しいですね。

 業務に追われる毎日ですが、自分から改善点を見つけるようにしています。プロジェクトを進めるためにもっと簡略化できる業務フローについては、欧米の製薬企業に提案を行い、それが受け入れられたときの嬉しさは格別です。

 内田 海外の製薬企業から、私たちCROにアジア地域での治験の進め方について相談を受け、プロジェクトの進行に関して提案することもあります。難しい依頼に対しても「できない」ではなく、難しくても「こういう方法ではどうですか」と投げかけてみることで、良い方向に進んでいく場合も多くあります。幸いにも、欧米の製薬企業の方たちは、私たちからの提案を喜んでくれますし、次もチャレンジしようという気になります。

 植松 小さな成功体験が積み重なることで、成長していくと思います。そう考えると、内田さんのようなチャレンジは大切ですよね。

 一木 欧米人は決めごとで動き、日本人は感性で動く、という言葉があります。グローバル開発ではいろいろな状況を想定しなければなりません。治験薬管理から治験を実施する医療機関に、治験薬を配送する割付業務も決められた期日までに行う必要があります。東日本大震災のような災害時に業務を継続していく体制も必要になります。言われて動くだけではなく、自ら考えて提案する姿勢は大事です。

 ――ITを活用した医薬品開発が加速していますね。ITの仕事を希望されていた西島さんは、わくわくしているのではないですか。

 西島 心が躍る反面でどこまで自分の力が及ぶか不安なところもあります。ただ、インターネット上にサーバーを置くようなクラウドの時代に入り、医薬品開発も進化しています。専門性が要求される分野ですが、そこで自分が活躍したいという思いが強いです。

 もともと、研究データをいかに早くグラフ化するということを出発点にITへ興味を持ちました。IT会社に就職するという話になったときには、周りから「変わっているね」と言われましたが、今では選んでよかったと思っています。

 内田 正直いって私は、ITは弱い分野です。ワード、エクセル、パワーポイントなどしか使わないですね。薬学部からITはなかなかつながってこないのは同感です。グローバルで治験を実施する時代を迎えるのと同時に、治験業務の内容も広がっているのを実感します。

CROの業務範囲が広がる
南氏

南氏

 ――皆さんの業界環境も変化していますが、薬学生を取り巻く環境も6年制や臨床実習などの導入で変わってきています。将来に大きな夢を持つ薬学生へのメッセージをお願いします。

 西島 私が担当している安全管理業務は、市販後の安全対策として、医療施設から医薬品に対する副作用の情報を収集しています。開発時点では見つからなかった副作用が発見されれば、当然添付文書の改訂につながる場合もあります。薬学生の頃から、「命の大切さ」をずっと学んできましたので、患者さんの命を守る現在の仕事に大きなやりがいを感じています。

 日本の製薬企業だけでなく、グローバル企業を相手に仕事をするようになり、業務の範囲がだんだん広がっている実感があります。薬学生の皆さんには、自分のやりたい分野を突き詰めて、就職するのも良いですが、長い人生でそれだけに固執してしまうと、自分の道は狭くなってしまいます。就職を1つの通過点として捉え、大きな視点を持ってほしいと思います。最初の就職先で担当するのがグローバルでの仕事でなくても、そこで得られる経験が、いずれ発揮できるはずです。

 内田 私は、就職活動をするときに“新しい薬を社会に届けたい”という思いで製薬、CRO業界を選びました。国際共同治験が増えたことで、日本だけでなく、世界で苦しんでいる患者さんに対しても、貢献できるようになったことは、大きなやりがいとなっています。CROがカバーできる業務範囲も増えていますし、多種にわたる医薬品開発のプロジェクトに関われるという面で、CROでの仕事は、多くの成長機会が与えられていると思います。実際に就職する会社を選ぶときは、会社の雰囲気や訪問したときに会った社員の方の印象も大事なポイントの1つでした。


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