【医学アカデミー薬学ゼミナール】臨床応用を意識した基礎の知識

2022年9月15日 (木)

薬学生新聞

化学科目責任者 上田 敬太郎、生物科目責任者 石塚 博康、衛生科目責任者 呉 理紗子

 近年の薬剤師国家試験では、基礎科目や衛生についても、臨床で応用されている内容の出題が増えています。基礎の知識が「臨床現場でどのように応用されているか」を確認しながら学修を進めましょう。国試だけでなく、薬剤師になった後の臨床現場でも、薬剤師の職能を発揮するために役立つ知識です。

 最新国試(第107回)を例として、具体的な出題傾向や学修方法について、薬ゼミの化学、生物、衛生の科目責任者が紹介します。国試に向けての学修のヒントにしてください。各例題では、薬学ゼミナール自己採点システムの結果を元にした国試受験生の正答率を「参考正答率」として示しています。

化学領域の特徴や出題傾向

 必須問題や実践問題を通して暗記ではなく、構造を見て判断する問題が多く見られます。基本的な知識の習得と共に、「知識を構造に結びつける力」を養いましょう。既出問題を解く際に、「構造のどこを見るべきか」「どの知識を使って解くべきか」を意識してください。

 本問題は構造がなく、単純にリセドロン酸Naという薬物に関する知識を問うものに見えますが、実際はナトリウム塩に関する問題です。問題文が「処方薬の化学的性質として……」であることと、処方の表記が、リセドロン酸ナトリウム錠でなく「リセドロン酸Na錠」であることを踏まえ、注目すべきポイントを見る力を養うとともに、塩を形成する医薬品の特徴を理解していることが肝要です(解答5 参考正答率48%)

 〔参照〕 リセドロン酸ナトリウム水和物は、リセドロン酸のナトリウム塩の水和物です。

 有機化学は「知識の積み重ね」が重要です。特に近年は、必須・理論問題で有機化学の基本的な内容がしっかりと聞かれます。その知識を取得した上で、実践問題では「医薬品や生体分子・反応に化学の基礎がどう関わっているのか」が問われます。有機化学の基礎をしっかり理解し、化学反応や医薬品化学について、与えられた構造や情報から判断できるようにしましょう。

生物領域の特徴や出題傾向

 図や構造、実験操作などから情報を読み取り、判断することで正誤を導く「考える力」「応用力」を必要とする問題が継続して出題されています。

 抗体の構造を用いた問題です。新型コロナウイルスの感染拡大などにより、免疫学の重要度が増しています。抗体は免疫学の中でも頻出範囲であり、他科目で学修する抗体製剤の作用、取り扱いなどにつなげることができます。まずは生物で免疫学の基礎を理解しましょう(解答3、4 参考正答率54%)

 免疫学の頻出範囲である抗体は、構造、生理作用、抗体クラスなど非常に多くの知識が問われています。その多くは記述問題であり、107回のように詳細な図を用いた出題はありませんでした。今後も既出の知識を図や構造に応用して、出題される可能性があるため、既出問題の演習後は青本の図や構造を確認し、応用問題へ対応できるようにすることが重要です。

衛生領域の特徴や出題傾向

 衛生の中でも特に「公衆衛生」の重要度が高いです。時代とともに問題視される健康問題も変化しており、近年、話題となっているトピックスが出題されやすい傾向にあります。また、私たちが抱える健康問題、その要因や予防対策に関するスタンダードな内容も多く出題されています。

 近年は急速なIT化やスマートフォン、タブレットの普及により、情報機器作業の長時間化が進行し、現代の仕事や日常生活に欠かせないVDT作業が与える影響が問題視されています。また、自粛生活やテレワークの導入によるストレスなど、心理社会的要因に対する対策も重要になってきます。このような近年の生活様式・勤務形態の変化によっても起こり得る代表的な職業性疾病とその要因、予防法を理解することが重要です(解答2 参考正答率88%)

 衛生は広範囲からの出題であるため、早期からの対策が必要です。医療系の科目では「治療」をメインとした内容を学修しますが、衛生では「予防」が中心であり、薬剤師にも予防の知識が求められています。既出問題を繰り返し解き、知識を定着させることで、衛生を得点源にしていきましょう!

最後に

 今回紹介できなかった基礎科目でも臨床とのつながりは重要視されています。例えば、物理では実践問題(第107回:問201)として、市中肺炎患者がSpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)を測定する際に使用したパルスオキシメーターの原理が問われています。コロナ禍でニュース、新聞などでも話題になることが多くなったSpO2の測定です。薬剤師にとっても医療現場で必要な知識の出題です。国試に向けて勉強している時に、話題になっている機器や検査について、その原理にも興味が持てるといいですね。

 また、衛生では必須問題(第107回:問16)で、体格指数の一つであるBMIを算出する式を解答する問題も出題されています。化学では理論問題(第107回:問106)で、プロテアソーム阻害作用を有する抗悪性腫瘍剤のボルテゾミブについて、構造から基礎的な内容を判断する問題も出題されています。生物では実践問題(第107回:問224-225)で、薬剤感受性試験(ディスク法)について問われ、その結果をふまえて最適な抗菌薬を選択する問題も出題されています。実務実習で先輩薬剤師が患者情報を得るために使用していた検査項目や数値の求め方、実務実習で処方されることの多かった医薬品の構造や抗菌薬を選択した理由なども意識して学修するようにしましょう。

LINEから「過去問解説動画」(無料)

 薬学ゼミナールの公式LINEアカウントから、今回紹介した第107回国試問題を含め、薬ゼミオンライン教室で無料公開している「過去問解説動画(第107~100回)」が視聴できます。問題の解説も見て、より詳しく勉強したい方は、自分で一度問題を解いて見てから、解説動画も覗いてください。

 <使い方

 薬ゼミLINEで「107-213」「107 118」のように記入して、送信してください。

 薬ゼミLINEURL
https://liff.line.me/1656872021-gB4GGQbK/d1d91698df194e68a1625e4abb11509b



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