病院薬剤師 橋本 貴尚
この度、昨年10月に岩手医科大学で開催された「薬学生フェスティバル@東北2019」(以下、フェス)のメインイベントであるワークショップに、講師として呼んでいただきました。学生の参加人数は6人(1年生1人、2年生3人、4年生1人、6年生1人)。大雨のせいもあって参加人数は少数でしたが、参加した学生はまじめでやる気のある方々ばかりで、筆者はここに「東北の薬学・薬剤師の未来」を見出したような心持ちでした。以降にフェスの熱気について紹介したいと思います。
日本薬学生連盟東北支部の19年度支部長は阿部亨哉さん(東北医科薬科大学薬学部2年生)で、この方を中心にフェスが計画されました。若いながら大役を担っておりました。阿部さんをサポートしたのは、18年度の支部長だった岩本佳幸さん(岩手医科大学薬学部6年生)。岩本さんはものごとを考える際の視野が広く、日本医療薬学会年会など各種学会に参加して勉強するなど大変熱心です。
ここで東北支部の紹介をさせていただきます。東北支部は17年4月に発足、初代支部長は東北医科薬科大学薬学部の熊澤雅貴さん(現4年生)で、岩本さんが18年度2代目、阿部さんが3代目です。来年度は岩手医科大学薬学部2年生の木村駿也さんが支部長に就任する予定です。若手の学生が東北支部を引っ張っております!発足の際の抱負は「東北の薬学生が集える場を作りたい」でした。
フェスの講師として受けたテーマは「スマホなどで簡単に情報を探せる現代にあって、薬剤師の役割とは?」でした。昨今、知りたいことはすぐ簡単にスマホなどで検索できる時代です。また、本屋にも様々な健康や薬に関する情報が載った本が売っています。
患者さんや一般の方々は、自身に処方された薬やOTC薬、サプリメントに関する情報を簡単に得ることができます。インターネット上にも「薬の情報なんてネットで調べれば良い」いう書き込みがあるくらいです。そうした中で「薬剤師の役割や存在意義って何だろう?」と、薬学生の多くが不安に思うかもしれません。
資料を作るに当たっては、実例とそれに対する薬剤師の取り組みを紹介することで、参加者が先述の不安を少しでも解消できるよう留意しました。受講形式は、筆者と参加者が一緒になって考えるグループディスカッション形式を採用しました。
筆者が経験した実例を、分かりやすくするために簡略化したものを用いました。それぞれの事例の演習に30分ずつ時間をとりましたが、学生の反応は実に素直で、隣で聞いていて面白く、大変参考になりました。
筆者が一貫して参加者に伝えたことは、「患者さんの不安に寄り添うこと」です。患者さんの不安を読み取り、患者さんの立場になって考えることで、本当に必要な医薬品情報のニーズが分かってくるのです。
18年度支部長だった岩本さんは「東北の薬学生は、他の地域と異なり、自ら進んで行動し情報を得ようとする学生が少ない印象があります。だからこそ、少ないながらも様々なことを見聞きし学びたいと思っている薬学生が一同に集える場を、東北にも作りたいと思い活動を行ってきました。しかし、まだ活動自体が東北の薬学生に浸透できておらず、人が集まっていないのが現状です」と話していました。
ただ、筆者が思うに、東日本大震災の後、東北の人々は結束して苦難を乗り越えようと頑張っていました。ですので、一度結束すれば東北支部はすごく伸びていくのではないかと予想しています。そうなるように、この記事を読んだ読者の皆さんも、東北支部の発展になにとぞお力添えを頂ければ大変幸いです。
今回の経験によって、東北の薬学生の将来、ひいては東北の医療の将来が少しでも明るいものになることを祈っています。東北の薬学生諸君、応援しています!