【対談】新卒社員が第一線で活躍できる業界‐CROが新薬開発を支える

2014年1月1日 (水)

薬学生新聞

開発から育成までをサポート

 ――製薬企業による新薬の世界同時開発が進むにつれて、CROもグローバル化に動き出しています。

 植松 まだまだ日本国内だけで実施する治験もありますが、国際共同治験の割合が全体の約35%にまで拡大してきました。臨床試験の国際化や標準化が叫ばれるようになり、日本国内で治験業務に携わる人たちも海外の臨床試験の手法を取り入れていかなければならない時代を迎えています。

 世界と肩を並べ、追い越していくために、英語スキルは必要となるでしょう。ただそれ以上に、国内の臨床試験の効率化や高質化に求められているもの、足りないものを探り、改善できるのがグローバルな人材です。大局観を持って仕事に取り組む姿勢が重要です。

 新薬開発支援だけでなく、薬剤が世の中に登場した後の製造販売後調査のサポートを強化する動きも出ています。多くの患者さんに薬剤が使われるようになった後、治験では確認されていない副作用や有害事象の調査業務や、市販後に既存薬との有効性や安全性を比較する臨床試験を受託するCROも増えています。臨床エビデンスを蓄積し、多くの患者さんに使われる“育薬”に対する貢献も期待されているのではないかと思います。

 ――協会や各社の教育体制はどうですか。学生からの認知度はどういう状況でしょうか。

 植松 各社が工夫して教育プログラムを作成し、それをもとに人材育成に取り組んでいます。GCPなど業務の基礎となる知識は、協会が「モニター教育研修」に関する基準として定め、研修プログラムの修了者に対しては、『日本CRO協会CRA教育研修修了認定試験』を実施し、業務に必要な知識・能力を認定しています。これらの取り組みは、協会に属する会社のモニターの業務実施レベルをできるだけ均質化し、業務実施水準を底上げするのに寄与していると思います。

  大学の協力もあり、学生の方からCROに対する認知度も高まっています。新薬開発に関わる業務を志望する学生さんの進路でも、研究所や製薬企業に続く3つ目の選択肢として、CROを検討している方も増えてきました。CRO業務を正しく理解していただけるよう、引き続き情報提供していきたいと思っています。

 ――人事評価制度などはいかがでしょうか。

 植松 能力に応じた給与体系、評価システムがあります。一定のスキルを身につければ、どんどん新しい分野に挑戦できる社内風土を持つ企業が多いのではないでしょうか。CROの裾野が拡大するにつれて、各社も成果に見合った評価制度やキャリアパス制度に力を入れています。

  女性が活躍できる業界だと言えます。働きやすい環境があり、データを1つひとつ確認する業務の特性からも、女性の細やかさを生かすことができます。実際、モニター全体の約65%は女性が占めています。

 産休・時短勤務にも対応し、会員会社によっては託児所を開設するなど働きやすい環境を整備しています。中には、「1時間有給休暇」というユニークな制度をつくった会員会社もあります。これだと、幼稚園や保育園でお子さんを迎えに行く際に、1時間早く仕事を終えることができます。こうした環境も、20年の歴史を積み上げてきた結果が反映されていると思います。

チャレンジする人材に期待

 ――薬学生にメッセージを。

 植松 CRO業務は、社内のみならず、社外で製薬会社、医療機関の先生方、CRCなど多くの人と関われる仕事です。将来的なキャリア形成に向け、成長できる土壌があるのではないかと思います。また、製薬企業のいろんなプロジェクトを経験でき、必要な知識やコミュニケーションを磨くことができます。社内でやる仕事と社外の人たちと協力してやる仕事の両方のスキルを兼ね備えられます。

  CRO業界は、揺籃期から創造期、確立期を経て、成長・発展期を迎えました。これから、大事な発展期を経験できるという点で、薬学生のみなさんには大きなチャンスがあるのではないでしょうか。

 私が所属する会社では、新卒社員に『入社後1年間の君たちの仕事は失敗することだ』という言葉を伝えています。その期間を過ぎると、失敗が許されないような立場になりますが、それまでは先輩たちがフォローしてくれます。だからこそ、臆せずチャレンジする人材に期待しています。新たな時代を切り拓くみなさんの若い力と挑戦をお待ちしています。


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